本棚は、読み終わった本の置き場所です。

私の家独特の習慣だと思うのですが、本棚にはいつも、読み終わった本が雑多に並んだり、重なったりしていました。祖母が本をよく読む人だったので、家の中にはどこにでも本がありました。ただ、祖母は片付けない人で、『この人は全然読まないんだから!』と責められてばかりいた祖父は、祖母が所構わず置いて歩く本の置き場所のために、部屋のあちこちに棚を作っていきました。

昭和2年生まれの祖母が言うには、生家で、子供の頃に親が東京から取り寄せた雑誌などを読んでいると、近所から『明るいうちから遊んでいて怠け者だな』と言われたそうです。だから、明るいうちは押入れに隠れて読み、暗くなってから続きをイッキに読んでいた、というフラストレーションのたまる思い出があったので、歳をとったいまは読みたいところで読みたいだけ読むんだ、というのが祖母の理屈でした。

slf_voice38_06また、『買った本を、本棚に入れてしまえば読まなくなる。読んでから本棚に置きなさい。読む前から、本棚に入れておくのは百科事典で十分。棚の重しになって地震でも倒れないから』と、いつも言われていました。そういう祖母のいる場所には、台所のテーブルの上といい、こたつの上といい、手元にかならず雑誌、文庫本、小説などが重なっていました。読むことも読むし、買い漁る量もかなりで、古書市のラベルがついている本も山ほどありました。もちろんトイレの中にまで、本が重なっていて、読みはじめて出て来ないことも良くありました。あれほど押し入れの中で読むのがイヤだと言っていたのに、狭い所で読むのには慣れていたんでしょうね。トイレに入っている祖母を、外から呼ぶと、『トイレの中にいる人間に声をかけるのは、死人を呼ぶのと同じなんだ!』と、妙な怒られ方をしたものでした。

そんな理由からか、私も買ったばかりの書籍は本棚に入れないで手元に積み重ねておくのが習い性となってしまっていて、自室に人を呼ぶのがかなり恥ずかしいです。世間ではよく『本棚の本で人間性を見る』と言いますから…。片付けない人だということは、バレてしまうでしょう。本当のことなので隠しようがありません。昨今流行りの電子書籍は、勝手に仮想の本棚に入っていくんですけどね。

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