杉並区の大学に面したきれいな木造住宅の一室に「Shelf 壁一面の本棚 奥行250mm」を設置いただきました。
リビングと寝室が、天井までの引き戸によって緩やかな形で仕切られています。その寝室側に縦7コマ×横7コマの本棚を配置して、単行本を中心とした蔵書を並べておられます。天井の高さに合わせるために最上段の棚板を調整してあり、床から天井まで壁いっぱいに広がる大型の本棚となっています。
天井までの引き戸がある瀟洒な内装のお部屋です。無垢材特有の自然な木の香りと裸足で歩いた時の柔らかな感触が感じられる落ち着いたフローリング、珪藻土の白い壁、そして天井の塗装面と、要素の少ないシンプルな色構成のインテリアに、本棚の木材の無塗装の素材感が馴染んでいます。壁いっぱいに広がる大きなボリュームのある家具ですが部屋全体の調和の取れた色彩に無理に割り込まず、まるで造作家具のようにすんなりと存在している印象です。
天井に埋め込まれたスポットライトの配線ダクトと引き戸のために天井に設置されたレールが2本、視界の中で静かな存在感を示しています。このラインと並行に、回り縁、巾木、フローリングの木目が並び、本棚の横材もまた同様に室内に6本の水平線を描いていて、お部屋全体に自然と溶け込んでいます。
マルゲリータの本棚は、縦板と横板に切り込みを入れて嵌合させて形成しています。両端の縦板とそれぞれの横板とは最小限のボルトで止められていて、水平方向への剛性は本棚の四隅に置かれたブレース材で確保されています。こうした構造のため背板をつける必要がなく、棚板の向こう側には壁面が見えています。本棚の背面には巾木をよけるためのカットが標準仕様で施されていますので、壁にぴたりと沿わせて設置することができます。
棚板を通して見える壁には天井灯からの光が入り込み、棚板による影がそれぞれのセルに濃淡の陰影をつけて光を含んだ柔らかいニュアンスを作り出しています。明るい色の棚板の見付が描く細いラインが格子状に立ち上がって、大きな壁面の前面を均質に覆っています。何もない壁面に大きなタペストリーがかかっているかのようなビジュアルが現れると同時に、障子の桟のイメージも連想されて、壁面の向こう側に別の空間があるかのような気配さえも感じさせてくれます。収納された書籍の背表紙は、そのサイズも色も字配りも様々で、それぞれの本はその個性を強く主張していますから、全体を見ると不揃いで雑多な色柄のストライプが横一列になり、さらにそれが４段になって並んでいるようにも見えます。この多色の帯のような集合体の前面に、棚板の見付によるグリッドが強く現れています。グリッド線には全体のビジュアルのイメージを落ち着かせ、統一感を感じさせる効果があって、書籍の背表紙が持つエネルギッシュな景観の上に全体として落ち着いた印象を付け加えています。四隅に置かれたブレース材はマルゲリータの本棚のアイコンでもあり、視線を集中させると同時に拡散させる効果線のような働きを果たしています。
本棚の奥行きは250mmです。一般的な本棚によくあるサイズで、それぞれのセルにはA4判の書類やファイル、それより少し大きめの雑誌などを収納することができます。
この事例と関連するプロダクト
壁面を天井やまで最大限に活用できる壁一面の本棚。専用の収納ボックスもある組み立て式。