本棚は、その家の「聖域」みたいな存在。

高校生の頃、友人にこんなことを言った覚えがあります。「本を買う人の気がしれない。本なんて、図書館や友だちから借りて読めばいいじゃない。どうせ一度読んだら、もう読むことはないのだから。そうすればお小遣いが節約できるしね」と。それに対し、返って来た彼女の言葉が忘れられません。「うん、それもいいよね。でも、私は自分が買って読んだ本を本棚に飾って、その背表紙を眺めるのも好きなの」。当時、まだ幼かった私は目からウロコが落ちる思いでした。その時はじめて、「だから人は本棚を家の中に置き、書斎という空間を設けるのだ」と、妙に納得したのです。

 それ以来、私は、欲しい本は自分で買い、それを本棚に並べる習慣がつきました。すると、そのことはひとつの楽しみになり、読書がより好きになりました。そうして本棚に並べた本は結婚後もそのまま新居に運び、同じく本好きだった夫の本棚とは別に所蔵し、今でも本棚にはパンパンの本たちが詰め込まれています。それはまるで自分史を物語るコレクションのように……。

 このことからも分かるように、「本棚」は書籍という極私的な財産を収納する聖域、そういってもいいぐらい大切な場所なのです。若い頃、こんな本が好きだった、こんな作家が好きだった、そして今は……と、その変遷を確認する場でもあるのです。

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 他方でまた、こんなことも言えるかもしれません。あなたが初めて他人の家を訪問した時、そこにきちんと書籍が並べられた本棚や書斎があったとしたら、その家の主たちにどういう印象を抱くでしょうか。たぶん、「知的な方のお住まいなのだ」、そう感じることでしょう。書籍の背表紙を眺めるだけで、主たちの趣味や人柄まで感じ取ることができるかもしれません。つまり、他人の家の書籍や本棚は「その人、その家を知る」という意味で手がかりを与えてくれるものなのです。それは、どんな豪華な調度品よりも、人としての中身を物語り、その家の「品格」を象徴しているのかもしれません。

 本棚のある空間、書斎のある生活……そこにはカタチには見えない、一朝一夕には成しえない、無形のサムシングまで所蔵されているような気がするのです。

margherita 東京ショールーム

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