書斎のある生活

私が書斎という言葉を知ったのは、小学校の頃だった。

私は幼い頃から本の虫で、当事夢中になっていたのは江戸川乱歩の明智小五郎シリーズだったが、その本の中に出てくる依頼人達はお金持ちが多かった。

彼らの中には、自分だけの書斎がある生活をしている人物がいた。広いお屋敷に妻子と一緒に住み、使用人や女中を雇っている。

私は、その箇所を読んでも「ふーん」としか思えなかった。自分が使用人や女中に

傅かれている所を想像してみても、すぐに現実の世界に引き戻されてしまう。

それより、彼らが会社から帰ってから独りで籠もる「書斎」という部屋の方が、よっぽど気になる。

私は本のその箇所を食い入るように読んだ。

その書斎は、窓を背にして頑丈な机が置いてあり、机の両側の壁は作り付けの本棚になっていた。御客様の本棚

鍵をかければ完全に密室で、家族といえどもプライバシーは侵せない。

私の部屋は和室なので、すぐに襖を開けられてしまう。

鍵をかけられる書斎には憧れた。

中学に入ってから、アーサー・コナン・ドイルのシャーロック・ホームズのシリーズに夢中になった。

ホームズの部屋も本が多かったが、彼の部屋もやはり窓を背にして頑丈なアンティークの机があり、机から部屋を見ると両側の壁が作りつけの本棚になっている。

 

この部屋が書斎・寝室・研究室・ダイニング・リビングと状況によって変化するのだろうが、今で言えば1Kにあたるのだろう。

私は、「この部屋の方が面白い」と思った。

明智小五郎が描いたお金持ちの依頼人達が持っていた書斎は、この部屋とほぼ同じ造りをしていた。これは想像だが、江戸川乱歩が作品執筆で、依頼人の人物の書斎を設定する時に、ホームズのような部屋をモデルにしたのかもしれない。

お金持ちの依頼人達は、葉巻をくゆらせ、地下に美術品や高価な仏像を収蔵していた。

そのような生活にふさわしい書斎を書きたかったに違いない。

中から鍵をかけて本を読む事も出来るが、時には訪れる人がくつろいだ気持ちになる部屋。そんな書斎こそが、私の贅沢の極みだ。

margherita 東京ショールーム

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