1Kのアパートが書斎のようになった生活

二十代前半の頃、社員寮で暮らしていました。独身者のみ物件で、決して広いわけではない1Kのアパートでした。当時はまだ電子書籍もあまり普及していませんでしたし、わたし自身、本の手触りや匂いを気に入っていたため、そういったものには手を出していませんでした。

そのため問題になったのが、本の置き場でした。

本は非常にかさばります。例えばアーティストのアルバムなら、ディスク二枚で全二十曲入っていたとしても、せいぜいハードカバー一冊分のスペースです。ですが、文庫本二十冊、もしくはハードカバー二十冊となると、その厚みはちょっとした棚のスペースがほとんど埋まるほどになります。

とりあえず1Kのアパートの小さめな調度と見合わせて、幅の狭い本棚を買って、設置しました。もちろん本をたくさん効率良く収納できるようにサイズも厳選し、住居の縦のスペースを活かせるように高い本棚にしました。倒れないようにもしました。

ですがその程度の工夫ではまったく追いつきません。本棚を増やし、あまり衣類も小物も持たないため、押し入れの類にまで小さな本棚を置き、本を並べました。そうしてやっと、本の置き場が落ち着いたのです。slf-lr_voice12_00-825x510

そうなっていざ見回してみると、1Kのアパートというよりも、まさに書斎のようになっていました。書斎の定義にはいろいろな考え方があると思いますが、書斎を読書や書き物中心の場所と定義するなら、まさにこの社員寮の一室は書斎と呼ぶにふさわしいようになっていました。

ある先輩社員がうちのアパートに来たとき、驚いていました。やって来たのは初めてでした。その先輩社員も同じ社員寮で暮らしていました。1Kのつくりも広さもまったく同じでした。ですからここのアパートの独身の男の部屋は、こんな感じだ、という固定観念があったのでしょう。

一通り本の背表紙を眺めた後、「まるで図書館みたいだな」と言われました。そのときの誇らしいような、恥ずかしいような不思議な気分をまだよく覚えています。

margherita 東京ショールーム

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