我が書棚は検索不能のデータベース

数年前、家を新築し、ささやかながら「男の城」とでも呼べる自分の空間を持つことができました。三畳間くらいのスペースを、窓に沿って頑丈な板が縦断しています。これが机の役割を果たし、残った細長いスペースのほぼ半分を占拠しているのがスライド式の書棚です。これが私の書斎と呼べる場所なのです。しかし先程も書いたように、「書斎」などと名乗るには憚られるほどの狭さですが、この狭さにも利点があることを発見しました。もし地震でこの書棚が倒れてきても、「机」に倒れてそこで止まるので、私はそこにできた三角形のスペースのお陰で生き延びることができる可能性が高いことです。また、狭さゆえに大概のものに手が届きます。読書やパソコンを叩いている途中にイスをくるりと回すと、そこには本のジャングル、私の書棚が眼前に広がっているのです。「ジャングル」と形容したように、決して私の書棚は本が整然と整理されてはいません。読んだ本を他の本の上に平積みにしていくので、年代順に積み重なる地層よろしく、読んだ順に本が重なっていくのです。lgf01a201402281700

最初はジャンルごとにきちんと整理していました。スライド部分にはよく読む本と趣味であるミリタリーや戦記、スライドの奥には語学の本、将棋の本をまとめました。文庫や同じ会社の新書版は並べ、最も冊数がある講談社現代新書のコーナーがクリーム色の帯となっているのを見て悦に入ったりしました。しかし、本を並べて揃えるのと読むのは共存しなかったのです。次第に秩序はカオスに取って代わられ、奥行きがあるのが災いして、きちんと縦に並べた新書版は、平積みの文庫本でタイトルが見えなくなるほどになりました。片付けるのも自分、乱すのも自分という闘い(?)がしばらく続きましたが、最近は読みたくなった本を捜すのも楽しみの1つだと割り切るようになり、私の書棚は「検索不能のデータベース」という、形容矛盾の存在となりました。

時折、最も奥にある本を見るために書棚をスライドさせる時は、大銀行の地下金庫を開けるような気分です。しかしそこにあるのは目もくらむような大金でも金塊でもありません。大判の「復刻版伊能図」だの、原書房の「第二次大戦歴史地図」だのが「おお来たか」、という顔で待っているのです。

margherita 東京ショールーム

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