裏磐梯にある滞在型リゾートホテルの客室において、従来ソファ前に置かれていた小ぶりなリビングテーブルを廃し、代わってソファに座ったまま食事ができる大きなリビングテーブルを試験的に導入いただきました。これにより、ホテルの厨房から直接客室にケータリングされた料理を、移動や体勢を気にせず、ゆっくりと味わっていただけるようになっています。
もともとこのホテルの客室は、細部にまで配慮が行き届いた建築的完成度の高い空間で、滞在そのものが豊かな時間となるよう設計されています。浴室には天然石を用いた湯舟が設えられ、源泉かけ流しの温泉が注がれるなど、非日常のくつろぎを満たすための仕掛けが随所に施されています。
今回導入された大きなテーブルは、食事の利便性だけでなく、室内の表情そのものにも新しい変化をもたらしています。広いテーブル面は光を受け止める大きなキャンバスのように作用し、日中には窓からの緑が映り込み、夜には照明の光が柔らかく反射して空間を照らします。昼と夜とでまったく異なる印象を与え、滞在の時間そのものに深みを加えています。
客室というプライベートな空間で、温泉とともに食事までもがゆったりと楽しめるだけでなく、家具を通じて時間の移ろいを感じられること。今回の取り組みは、リゾートホテルにおける“滞在の質”をさらに高め、お客様に新しいおもてなしのかたちを提供しています。
ローテーブルと座卓
ここからは一段上がった畳の間で、ローテーブルを座卓としてお使いいただく様子です。テーブル自体は同一のものですが、用途によって呼び方が変わります。床に直接座って食事や作業を行うときは「座卓」、ソファなど腰掛けの高さに合わせるときは「ローテーブル」あるいは「リビングテーブル」と称されています。
正方形の縁なし畳が敷かれた室内は、床が畳であることを除けば意匠はすべて洋風でまとめられています。その和と洋の重なり合いが、不思議な調和をもたらし、日本人にとってどこか懐かしく、同時に新鮮でもある落ち着きの空間を形づくっています。
畳の柔らかな弾力に足を下ろし、姿勢を低くしてテーブルに向かうと、自然と心が和らぎます。座ったときの目線の低さや、畳のひんやりとした感触、時には素足で触れる心地よさも、この空間ならではの魅力です。そこに置かれたローテーブルは座卓として違和感なく溶け込み、食事や団らんのひとときを支える場となっています。
洋風の家具が和の床と呼応し合い、互いを引き立てながら空間を満たしている様子は、日常の中に静かな特別感をもたらします。座る姿勢の心地よさと、畳の質感がもたらす安らぎが重なり合い、空間全体が自然と人を迎え入れる、落ち着きに満ちた居場所となっています。
客室内で楽しむケータリングと豊かな時間
客室内でケータリングされた料理をゆったりと楽しむためには、料理を十分に広げられるテーブル面が不可欠です。特に二人並んで食事をする際には、単純に二人分のスペースを確保するだけでは足りず、それ以上の余裕ある広さが求められます。その余白こそが、空間に豊かさを与え、食事のひとときをより贅沢な体験へと導きます。
ソファに腰かけ、窓の外に広がる景色に目をやる時間。あるいはテレビに視線を移しながらリラックスする瞬間。そして、目の前に並んだ料理に向き合い、二人で言葉を交わしながら過ごすひととき。そのどれもが、客室というプライベートな場であるからこそ得られる、静かで豊穣な時間です。
さらに、この大きなテーブルは光を映し込む舞台ともなります。日中は窓から差し込む光とともに外の緑がテーブルに映り込み、食卓が景色の一部となります。やがて夕暮れには柔らかな陰影がテーブルを包み、夜には室内の照明が反射して温かな輝きを放ちます。時間の移ろいとともに表情を変えるその面は、食事そのものに彩りを与え、滞在を豊かに演出します。
滞在型のホテルにおいて、食事の場がそのままくつろぎの延長線上にあることは、体験全体の品格を大きく高めます。光と時間の変化を受け止める大きなテーブルの存在は、単なる家具にとどまらず、非日常を過ごすリゾートにさらなる深みをもたらしています。
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