渋谷区にあるソフトウェアを開発する会社の社内に様々なゲームソフト、コミック本等の資料を収納展示、同時にそこで子供も遊べるといった空間を提供されています。
そこの資料棚に「Shelf カウンター付き本棚」をベースにしたオーダー仕様の本棚を導入いただきました。
このスペースは森の中のような設えになっていて、正面の壁一面を覆う形でフルオーダーの本棚が設置されています。広い壁の中央部に置かれた縦9コマ×横9コマの本棚は、横2コマの本棚と横7コマの本棚を並べて連結して組み立てられています。本棚の両脇のスペースの足元には黒く大きなスピーカーが置かれています。
ダークブラウンの壁紙とPA関係の機材の黒色と、毛足の長い芝生のようなグリーンのカーペットが敷かれた床の色彩が強いインパクトを持っているインテリアです。そこに置かれた本棚とその前に配された3台の小さなテーブルは明るい色で、垂直線と水平線の組み合わせによるパターンが大小とりどりに繰り返されながらスペースの一角を形成しています。棚板の見付によってできる格子状の細いラインは、棚の下部では大きめのグリッドを、上部では障子の桟を思わせる小さめな長方形のグリッドラインを描き、テーブルの木材の太く強いラインとの相乗効果によって上方へと抜けていく軽やかな印象が生まれています。
下方3段の本棚のうち、中央部の3つの列で特別仕様の棚板の構成になっています。収納するコンテンツが決まっている場合にはこのように目的に合わせて棚板の配置をデザインすることも可能です。機材の背後に配線のコードが何本も通されている様子が見えていますが、こうしたコードを通すためにカット加工を施すことも可能です。
マルゲリータの本棚は本棚の四隅に設けられたブレース材によって水平方向への剛性が十分確保されるために背板を必要としない構造です。本件ではブレース材が最下段の両端に2箇所にしか配置されていないため、その補強を兼ねて中央部に背板が配置されています。この背板は通常とは違うスパンで配された縦板を補強、下2段目の幅の大きなセルの形成を可能にしています。このセルには350mmの奥行きからもオーバーハングする大型の機材が置かれていますが、本棚の前に棚板の高さと同じ高さの小型の台を置くことで安定した設置スペースが確保されています。
マルゲリータの本棚のもう一つの特徴は背板がないために背後の様子が見えることです。本件では下3段の中央部に背板が設置されていますが、全体の中では小さな面積を占めているだけなので棚板とコンテンツの背後の壁まで視線が通ります。
棚板を通して本棚の背後のブラインドのかかった腰窓が見えています。窓の前の部分は奥行180mmのコミック本棚のサイズで、主にBlu-rayディスクのケースなどB6判程度の比較的小型でサイズの揃ったコンテンツのシリーズが置かれています。コンテンツの天端とその上部の棚板との間にはサイズの揃った空間が形成され、そこからブラインド越しの柔らかな光が棚の内側に入りこんでいます。また、コンテンツが完全に充填されていないセルでは背後がほどよく見えます。本棚には大量の資料だけでなくここで遊ぶ子供のための絵本やコミック本なども納められ、機材の置き場にもなっています。様々な用途のために収納された数多くのコンテンツが並び、それらの色とりどりの背表紙が作る色面は壁にかかるカーテンのようにも見えていますが、その最前面には棚板が描くグリッドラインが現れて、ハイライトになります。壁一面を覆う本棚のボリューム感と相まってダイナミックなビジュアルを形成していますが、固定された棚板によるグリッドラインによって全体が細かく均等に整えられているために壁面にはクールさと有機的な温かみの混じり合った雰囲気が加えられています。ここには恰も「静かな森の中の秘密の遊び場」のような雰囲気さえ漂っているようです。
この事例と関連するプロダクト
壁面を天井まで最大限に活用できる壁一面の本棚。専用の収納ボックスもある組み立て式。