窓からは東京湾が見渡せる写真スタジオ 「STUDIO PODBASE平和島」様のご紹介です。ミッドセンチュリーの時代の名作と言われているプロダクトが点在するその室内に「Shelf ロータイプ本棚」を設置いただきました。
1960年代を代表するようなプロダクトデザインがモダニズムから脱却しながらポストモダニズムに向かいつつあった時期の、角が丸く原色系の器の中にあっては異色と言えば異色とも思えるマルゲリータの本棚が置かれています。またこの本棚には本はなく、専らその存在を主張しているプロダクト群の背景に徹して完全にその室内の白い内装側に立っています。
ミッドセンチュリーのプロダクト
当時のインテリアデザインには、そこに過不足のないアプローチがあり機能性と合理性を追求したシンプルで近未来的なスタイルが際立っていました。特にプラスチックの曲線的な家具がその雰囲気を助長し、「20世紀中頃」と命名された、それが今日では独自の響きで言葉と形が一体化した不思議な世界感を作り出しています。しかしまさにその名の通り、その曲線的で洗練されたデザインは当時の未来の概念を反映しつつ現代においても新鮮でありながら過去への期待と錯覚が交錯した独自の造形美を有しています。
この時代の特徴的な点は、家具に限らず家電製品も多く含まれています。しかしながらこれらの家電製品は現代においてはその主要な機能が完全に消失してしまったものが多く見られます。例えばタイプライターや白黒テレビ、テーププレイヤーなどがこれに該当します。一方で、チェスト、椅子、タペストリーなどは現代においても十分に有用であるオブジェクトもあり、これらの存在がかつてのプロダクトの消失を補完し現代へと続く架け橋となっているように思はれます。
現代において、家電製品や特に電子機器は頻繁にバージョンアップされ、絶え間なく新しい製品が前の製品を踏み台にして次々と市場に投入されています。この状況からは、一世代前の製品があたかも陳腐化したかのように見えるだけでなく、現在所有している製品ですら、将来的にはより優れたものが登場するのではないかという不安を抱かせることもあります。こうした事態を考慮すると、ミッドセンチュリーのプロダクトはその時点でほぼ「決め打ち」とも言えるような、輝かしい近未来を一方的に予想したデザインであり、それが新鮮であり、夢見るような要素を含んでいます。
コマーシャルフォトを撮影する場合にはそのものだけを正確に描写するための単色を背景とした所謂「ブツ撮り」と言われているやり方と、もう一つは何らかのオブジェクトと関連のある背景を用意してあたかもそれが自然な使われ方をしている様なシーンを演出する方法があります。本件はその後者の撮影シーンを用意するスタジオです。
1960年、日本で言えば懐かしく語られる昭和の時代の中の戦後の成長過程にある時代、モノだけでその時代を彷彿させるようなプロダクトを持ってその背景とされているこの撮影スタジオはある意味異色な存在です。和風、洋風、メルヘン調・・・・と言った幾許の誰もが逆に見慣れてしまった普通の画像ではない尖ったアピールを求めている客層を対象とした特異な撮影スタジオです。
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