国立大学の医学部研究室の資料室で「Shelf 開口部のある本棚」を2台および「Shelf 壁一面の本棚 奥行350mm」を2台、計4台の本棚を一列に並べてお使いいただいています。
100年以上の歴史を持つ大学医学部研究室の貴重な資料、国内外における関連の学術書等が一堂に集められた歴史の重さを感じずにはいられない圧巻の空間です。
古い学術書は、この様に一堂に並べられると、その背表紙の色はセピア色から赤褐色に近い黒色までまるでモザイクの様な構成になります。距離を取って俯瞰すると、その濃い色合いの古書は本の装丁としてはほぼ現代のA4サイズに揃っているため、並べても統一感があり一定の塊に見えてきます。
グリッドで仕切る
ここではその濃い色合いの塊が壁面収納全体を通して均一なグリッドで仕切られています。これは本来目的としたものとは異なりますが、獏とした空間、塊を均一なグリッドにより網目を掛けることで空間そのものがあたかも静止して見えるという手法、グリッドユニフォーム(grid uniformed)、に近いものがあります。すなわち動きが感じられるものに均一のグリッドを被せる事でそのもの自体が止まっているかに見せる手法、それはこれまでぼんやりとして存在していた古書をグリッドの中に収めることでその存在を確立させている事と似ています。
空隙が映える
更にそのグリッドで仕切られた濃い塊の一部は、大小の空隙により色が抜かれます。
大きな空隙は本棚の開口部です。これは、その本来の目的である住宅のリビングボードとして使われる場合にはそこにTV等を入れるためであったり、もしくは窓のある壁面に本棚を置く際にはその窓を生かすための開口部であったり、といった使い方を前提としたものです。しかし本件では、グリッドには入り切らない大型の書籍をここに収めるための予備のスペースとして設けられています。現段階ではまだ十分な余白を残しています。
小さい方の空隙は、最下段に設けられたブレース板が入ったセルです。通常マルゲリータの本棚は、その四隅にブレース板を入れることで平面的な剛性を保持していますが、本件の様に水平に連続する場合には、2台単位で本棚同志の側板を固定させ、その隣り合う箇所のブレース板は省略することを可能としています。ここでは、隣り合う側板に接するブレース板は下段の分は全て残す代わりに、最上段に於けるブレースは左右両端を除いて省略され収納量を確保しています。結果的には隣り合う2台単位で並ぶブレース板を省略し、残りのそれを生かした際と同じ数だけのブレース板を確保している形になります。使い勝手からは上段の方が下段より有効、両端より中央の方が有効なのである意味理にかなった空隙の配置です。
グリッドユニフォーム(grid uniformed)により網目が入った塊としての書籍と必要性から生じた空隙の対比を横から見た姿です。
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