大学研究室

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大学の研究室において、本棚の選定は教授と学生の双方のニーズに合致する必要があります。以下に、両者の視点から求められる特徴を示します。

大学の研究室に本棚を導入する際も、内装工事を伴わない形で本棚を設置する事が理想です。工事が伴わなければ、研究室の壁面に直接本棚を配置でき、スペースを効果的に活用することができます。また将来的な移転、変更、明け渡しが発生しても、柔軟に対応する事が出来ます。本棚の寸法が変更される可能性がある場合でも、簡単な調整で新しい配置に合わせられるため、研究室のレイアウト変更や設備更新に際しても、迅速かつ費用対効果的な対応が可能です。

特に研究室では、変化に対応しやすく、効率的なスペース利用が求められます。壁面本棚の導入は、この要求に応えつつ、環境の創造的で機能的な変革をもたらす必要性があります。

大学の研究室に於ける本棚

【File 743】高分子ゲルの研究室に -2 - Shelf 壁一面の本棚 奥行350mm - マルゲリータお客様事例

教授の視点

研究室は多くの書籍、論文、資料が集まる場であり、本棚はこれらを効率的に整理できるような大容量かつ機能的なものであるべきです。また研究の進展に伴い、新しい資料や書籍が加わることがあります。本棚は柔軟な配置や変更が可能であり、将来的なニーズに対応できる仕組みが求められます。

そもそも大学の教授は平均して最も多くの蔵書を所有していると考えられます。これは、本好きであることに加えて、研究室と呼ばれる専用の書庫が大学から無償で提供され、また研究費の名目で本をある程度自由に購入できるためです。そのため、本の蔵書を大量に所有している教員は珍しくありません。年間一千冊といった膨大な量の本を読まれるケースもあるため、蔵書も自ずと多くなります。大量の蔵書に対応すべく大容量の本棚は必然的に求められます。

学生の視点

学生は頻繁に資料や教科書にアクセスするため、本棚は利用しやすく、必要な資料が迅速に取り出せる構造が重要です。また本棚は学習や研究に集中できる環境づくりに寄与するべきです。空間全体の一体感を損なわず、学生が快適に過ごせるようなデザインが好まれます。それは本棚にあるべく紙の蔵書のみでなくデジタルデータも同等に扱われる必要があります。更に研究室は協力と情報共有が必要にもなります。その意味で本棚は学生同士のコミュニケーションや資料共有を促進するための配置やデザインが求められます。

総じて、教授と学生の要望をバランスよく満たすことができる、機能的で柔軟な本棚が大学の研究室に適しています。

研究室に於ける蔵書

[File 730] 大学研究室の壁面本棚 - Shelf 壁一面の本棚 奥行350mm - マルゲリータお客様事例

研究室の蔵書

一般的に、大学の研究室に置かれた本棚には研究室の教授の蔵書だけでなく、学生の論文や研究者が利用するための専門書や資料も含まれることがあります。研究室の本棚に収められた書物は、その研究室の専門分野や研究テーマに関連するものが多い傾向があります。

教授の蔵書が一部を占めつつも、大学の研究室はその研究の拠点であり、教授や学生が共同で研究を進める場でもあります。そのため、研究室の本棚には研究グループ全体が利用するための資料や参考文献、最新の研究論文などが共存する形で並びます。多様な知識や情報が共有され、それが研究者や学生たちの研究に役立つようになっています。

文系と理系

大学の研究室における書籍の量は文系と理系で統一的な規定があるわけではありません。各研究室や教員の方針、専門分野によって異なります。ただし、文系と理系の研究室で共通して見られる傾向があります。

文系の研究室では、主に文学、歴史、社会学、哲学などの分野で研究が行われます。こうした分野では、主に論文や文献の解釈・分析が中心であり、多くの場合、大量の書籍や論文を参照することが求められます。そのため、研究室には幅広いジャンルの書籍が充実していることが一般的です。また、特に専門書や海外の古い文献はデジタル化されておらず、紙媒体としての書籍量が膨大なものとなります。

一方で、理系の研究室では、物理学、化学、数学などの分野では、実験データや特定の実験手法や計算手法に関する書籍や学術論文が主流となり、デジタル化されているものも多く存在します。ただし、建築や土木系の研究室では、図録や写真集も多く使用され、そのためには紙媒体が主体となります。

実例

File521 大学建築学科の研究室に

最上段に配置された縦の要素と、予め天井に露出する形で設けた下地材をL型の金具で結合し、背の高い本棚を間仕切りとして使用されています。

ここでは本棚の手前には既存の低い本棚が配置され、その上に新たに設置された本棚が重ねられています。これにより、本棚の上部はゼミ側で利用され、対照的に反対側は教授の執務スペースとして活用されています。本棚は両面から有効に利用され、ゼミ側には広いテーブルがあり、建築関連の書籍が配置されています。背板のないデザインにより、本棚を通しても外光が差し込み、研究室全体がアカデミックで知的な雰囲気を醸し出しています。


File571 新しい生物学研究室の壁面に

生物学および生命科学の専攻を効果的に再編成し、多岐にわたる社会的要望に対応する柔軟な教育研究組織を構築するために、幅広い研究室が整備されています。この研究室は、研究施設を仕切るように配置され、その両側の壁一面を覆うように配されています。


File394 ロータイプ本棚を研究室の入口間仕切りに

東京芸術大学美術部の研究室に設けられたキャスター付きの低い本棚は、アトリウムから室内を眺める際に、作業デスク周辺の視線に調和するよう慎重に配置されています。これらの本棚は高さが約1.2mであり、通路からデスクの方向を見るときに柔らかく視線を遮る効果があります。


File550 先端技術の大学研究室に

都内の国立大学先端技術の研究室内、そこには2台の本棚が並べて配置され、これらは主に研究室内で使用する大量の学術書などを収納するための共用書棚として使用されています。ミーティングテーブルに面したこの本棚の並びには、電子レンジやコーヒーメーカーなどが収められたキャビネットも併せて置かれています。


File562 海の見える研究室に

この大学の海事科学の学科は、日本で唯一のものであり、その研究室では教員陣が研究テーマの選定や論文の確認を行いますが、ほとんどの場合、具体的な内容には滅多に介入しません。ここは、教員が自身の研究を進めながらも学生とのコミュニケーションの場を大切にし、そうした活発な議論やアイディアの交換が行われる特異な環境となっています。


File665 教育学部研究室の壁一面に

壁一面に配置された本棚では、主にA4サイズの書籍やファイルが収納されており、同時にA5サイズの単行本も「本棚の中の棚」を活用して、効率的な収納が実現されています。このエリアは、教授用のデスクとゼミ用のテーブルが配置され、その背後全体が形成されており、アカデミックな雰囲気が漂っています。


File666 研究室の壁一面に

富山大学学術研究部、微生物学教室の研究室に壁一面の本棚開口部のある本棚を2台並べて、壁面収納としてお使いいただいています。柱間に丁度収まる形で置かれたその壁面収納は、ほぼ壁面を埋め尽くし収納量を確保しておられます。 開口部のある本棚はその開口部にPCモニターを置き、その前面に置かれた会議用テーブルを介して複数人でその画面を囲める形になっています。


File655 ライティングビューローを包み込む

研究室を兼ねた教授室とそこに隣接する打合せ室です。研究室は横に細長い平面形をとりその横一列に壁一面の本棚が一部開口部を設けながら連続しています。ここで特筆すべきは、その一列に並んだ本棚のほぼ中央の開口部に以前からお持ちのライティングビューローを包み込む様に据えている点です。


File768 北陸先端科学技術大学院大学の研究室に

北陸先端科学技術大学院大学の情報科学研究室には、開口部のある本棚と壁一面の本棚が設置されました。これらの本棚はそれぞれ、横に5つのコマと縦に7つのコマが連続して配置され、フィラー板によって縦材が伸長され、まさに壁全体を天井まで利用した収納スペースが構築されています。学生用のスペースと教授専用の本棚は穏やかに仕切られ、ほぼその位置に合わせて室内もパーティションで区切られています。


File679 高分子ゲルの研究室に

「開口部のある本棚」は通常、ワークデスクの延長上に設置され、そこにモニターが配置されたり、または部屋の形状によっては開口部が窓に連なりながら自然光を取り込む使い方が一般的です。しかし、この具体的なケースでは、開口部には絵画が掲示されています。ワークデスクに向かう際の椅子は、その正面から少し外れ、同時にミーティングスペースからも正面に向けられた配置にされています。


File743 高分子ゲルの研究室に-2

このエリアは、教授室とは異なり、研究室の准教授や助教がそれぞれ自身のスペースを持ち、程よい距離を保ちつつ研究に集中できるように設計されています。本棚には7列と5列の二つの形状が採用され、7列の本棚は壁に直接配置されています。一方で、5列の本棚は間仕切りの機能も果たしながら、両者が天井まで広がるように設置されています。


File730 豊田工業大学 知能数理研究室に

研究室の奥には、ゼミや輪講が行われるスペースが広がっており、ソファーや椅子に座りながらプロジェクターやホワイトボードを活用して発表を聴くことができます。このミーティングエリアの奥には、壁一面に2台の本棚が配置されています。ここには研究室の学生が共有するための大量の洋書や和書が整然と並び、学生はいつでも手に取って読むことができます。気になる本が見つかれば、ソファに座りながらゆったりと時間をかけて読書にふけることができ、居心地の良い配置となっています。


File661 国立大学の医学部資料室

都内の国立大学の医学部研究室の資料室で開口部のある本棚を2台および 壁一面の本棚を2台、計4台の本棚を一列に並べてお使いいただいています。100年以上の歴史を持つ大学医学部研究室の貴重な資料、国内外における関連の学術書等が一同に集められた歴史の重さを感じずにはいられない圧巻の空間です。


File797 机上を広く使う

東京工芸大学工学部厚木キャンパスの研究室では、アンダーカウンター本棚が2列横に配置され、それらが対面式に向かい合い、計4台が研究室の学生用に使われています。アンダーカウンター本棚のデスクの広さは、最大で幅2400㎜×奥行800㎜あります。この配置により、デスク下に本棚が収まるため、広い作業スペースが確保された机となっています。広い作業環境はデスクトップパソコンを設置したままでも、本やノートを広げて作業ができます。また、身動きがとりやすく、ストレスなく自由に動けるため、集中力が高まり、作業効率も向上します。

考察

研究室には本が必要

[File 730] 大学研究室の壁面本棚 - Shelf 壁一面の本棚 奥行350mm - マルゲリータお客様事例

キケロの言葉に倣えば、「書物のない空間は、魂のない身体のようなものだ」という彼の哲学を振り返ると、知識を蓄えることの大切さは千年を経て今も変わりません。ところが、もしも大学の研究室がほとんど本を持たず、全てがデジタルデータでアクセス可能だったなら、その室内ははまさにキケロの言葉通りまるで魂のない空間のように映ります。最新の情報には容易にアクセスできる一方で、デジタル化が進んでいない古い書籍や文献は手に入れることが難しい。研究室は本来、デジタルデータでは得られない独自性や歴史的な価値を持つべきです。現代はデジタルデータがどこにでも存在し、容易にアクセスできる時代であるがゆえに、大学の研究室は他では手に入れられない、半ば古書店のような雰囲気漂う独自の空間であるべきです。

退官後の問題

現在の図書館は本の寄贈や買い取りに対してあまり歓迎的ではありません。また公立図書館や大学図書館は予算削減に悩んでおり、教授や元教員が残した蔵書を引き受ける余裕が急速に失われています。空きスペースの整理やそれを管理するスタッフの不足もあって、無償提供できない状況が生まれています。その結果、退官後にその蔵書の処分を古本屋に頼るしか手がなくなってしまいます。更に以前と比べて古本の買い取り価格は非常に低くなっており、極端に言えばほぼ無償といった状況もあります。

留まるところなく増えていった蔵書の収納も必要ですがその先のことも視野に入れて考えなければいけない非常に難しい問題が常につきまといます。