アクセントウォールを背景に

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アクセントウォールは、室内デザインにおいて一部の壁面に異なる素材や色彩を取り入れる手法で、空間にアクセントを加えることができます。一般的に主要なカラースキームとは異なる色や柄を使用しています。これにより、その壁が強調され、空間にダイナミックな視覚的効果をもたらします。 

また、異なる素材を用いて質感や表情を変化させることも可能、例えば、レンガ、木材、タイル、壁紙などの素材を組み合わせることで、空間に深みや温かみを与えます。 

アクセントウォールとは

【File777】 リビングと子供部屋に お子様のための本棚 - Shelf 壁一面の本棚 奥行350mm- マルゲリータお客様事例

新築やリノベーションの際には、壁の仕上げ材料としてクロスを選ぶのが一般的で経済的にも合理的な選択です。内装に予算を割くことが難しい状況でも、真っ白なクロスを選んだり、パターン入りの洗練されたクロスを選んだり、目を引く色のクロスを選んだりしても、同じクオリティのものであれば価格はほとんど変わりません。価格と手間が同じであれば、無難な白ではなく、少し個性を出すことが良いと考えられます。これは、狭い部屋を広く見せるための手段や、長方形の部屋を正方形に近づけるための方法の一つです。さらに、アクセントウォールには、おしゃれさを演出するだけでなく、部屋を広く見せたり、冷たく(あるいは暖かく)見せたり、家具の質感をより引き立たせるなど、多くのメリットがあります。

ミニマルに構成された和的な室内 – Shelf 壁一面の本棚 奥行350mm – マルゲリータ使用事例

戸建て住宅の場合 その部屋に入った際の正面の壁

扉を開けた時や部屋の入り口付近に設けられたアクセントウォールは、効果的なデザイン要素です。例えば、壁面が明るい色調で統一されている中で、アクセントウォールが深い色調であれば、その色が奥へと伸びていく印象を与えます。このため、その向かい側の壁が視覚的に縮む方向へと見え、部屋全体がより広がりを感じるパースペクティブ効果が生まれます。この効果は、実際に体験すると想像以上の効果をもたらします。

一方、マンションや集合住宅のリビングダイニングエリアでは、通常、部屋に入った際にはバルコニー側に向かうことが多いため、バルコニー側にアクセントウォールを設けることは出来ません。リビングの場合、通常はバルコニーに向かう壁の左右いずれか、あるいはその場所にアクセントウォールを設けるケースが一般的です。

一番分かりやすいのがビジネスホテルの客室です。ここはベッド、コンソールデスクの位置が固定されていると言えます。すなわちここまで固定されるとその部屋を使う人の視界の動きも明確になり、更にはアクセントとなる壁の面積の関係からも「枕元の壁面」に使われるのが圧倒的です。また住宅に於いては近年の流れとしてトイレの壁面にも多く使われています。ここでもそのトイレ自体の部屋の形からして短い方の壁、即ち衛生陶器が置かれている背後の壁、トイレに入った時のまさに正面の壁になります。

以上よりアクセントウォールが採用されている室内の特徴として

  • あくまでアクセントなので短い方の壁面。長い方の壁に使うとアクセントが間延びしてしまう
  • 日常的にその壁に向かう時間は短い方がいい

すなわちアクセントウォールとは、面積としては大きくなく、そこに向かい合う時間も短いというのが基本姿勢にあります。

マルゲリータの本棚、アクセントウォールを背景に使う

【File 736】リビングおよび書斎の本棚 - Shelf 壁一面の本棚 - マルゲリータお客様事例

背後の壁が見え隠れする

マルゲリータの本棚には背板がありません。そのため本棚に何も入っていないと、あるいは並んでいる本の上部に隙間があるとその背後の壁は本棚を通して視界に入ります。これは当然の様で実はこれまでにはなかった室内の構成です。基本的に室内の壁の色は白色がほとんどです。そこを均一に並んだグリッドラインが切り取り、その切り取られたラインの中に書籍の背表紙が並び、更にその書籍の空隙を通して背後の色彩が施された壁面が浮かび上がる、といった独特の構成がその白い室内に浮かび上がります。一見カオスと化した書籍の背表紙の並びはその表面にグリッドを重ねる事により時間が静止したかのような静かな印象を与えながら白い室内に映えます。ここでそのアクセントウォールの壁面がその部屋あの中で占める面積、視界に入る時間が短いという点が更に効果的に重なります。

背後の壁が残った壁と呼応する

本棚が置かれている箇所の隙間を通した壁、及びそれが置かれていない部分の大きく残る壁、アクセントウォールはその前面に置かれた本棚によりその効果を薄められつつも、はっきりと残る壁の色があるとその残った色が色紙をちぎって並べた様な形になり、特にその色の主張が強ければ強いほど強烈な印象を残します。日常的な本の出し入れによりその形は微細ですが変わっていき、更にそのセルにオブジェクトを置けばその見え方はオブジェクト以上の別の側面になります。

アクセントウォールを背景に置いた実例

File676 赤いアクセントウォールを背景に

広い空間に広がる幅広い無垢材のフローリング、清潔感ある白い壁と天井が上品な雰囲気を演出しています。しかし、そんな中で一際目を引くのが、鮮やかな赤のアクセントウォールです。このアクセントウォールには格子状の本棚が配置され、書籍が収納されている一部分以外は抜けた空間となり、背後の赤い壁がそのまま現れています。この切り取られた部分と、本棚に向かって左側に残されたわずか1m弱の壁面との対比が、美しいバランスを生み出しています。


File484 夫婦共有の書斎で

ご夫妻共有でお使いいただいているこの書斎のアクセントウォールの色調は、黒に近いダークグレイです。この深みのあるダークグレイが背景となることで、書籍や本棚のフレームが非常に際立ちます。本の上端に連続する凹凸が、まるで切り抜かれたかのような形状で、その残された部分が壁の構造を微妙に表現しています。これにより、繊細で洗練されたデザインが生まれ、全体のバランスが優雅にまとまっています。アクセントウォールが巧みに隠れたり見え隠れすることで、まるで美しい切り絵のような効果が生まれています。


File421 高い位置の窓に合わせて壁面収納を調整する

子供が自由に動き回りながら学ぶためのスペースに、可変の本棚が設置されました。窓の高さに合わせ、開口部を工夫して配置することで、窓からの光や景色を妨げずに利用できています。

またここでは異なる色調を持つ壁面に、壁一面の本棚を配置することで、本来のアクセントウォールが際立ちづらくなります。そこで、正面から見て左側や本棚の開口部の下部、背板のない本棚セルの中から微妙に覗く「部分」の集合体が、そのまま残されたスペースと寄り添って壁面を繊細に表現しています。見え隠れするアクセントウォールの存在が、構成主義的な美意識を感じさせます。


File473 背板の一部を鏡に替える

元々、この本棚は縦材と横材の巧みな嵌合によって構築され、その特徴的な点は背板の存在しないことにあります。しかしながら、ここでは開口部の上部にミラー背板を取り付けるアプローチを採りました。このミラーが生み出す効果は予想以上に驚くべきもので、まるで窓が存在し、その向こう側の空間が広がっているかのような錯覚を生み出します。本棚の裏側にあたる壁は、淡い曙色のアクセントウォールとなっており、ミラーによる空間の広がりと、透かして見える微かな色彩が、部屋全体に奥行きを与える独特な効果をもたらしています。


File493 陽の当たるリビングの吹き抜けに

吹き抜けの真下に広がる青系のアクセントウォールが、背景となり、リビングルーム内に本棚が配置され、ディスプレイ棚として活用されています。特にこの季節は、クリスマスが近づく中、外は寒さが厳しくなる時期であり、吹き抜けから差し込む陽光が温かな室内を照らし、視覚的にも心地よい雰囲気を醸し出しています。


File409 アクセントウォールを背景に

本棚の背板が、棚板を通して透けて見えてきます。この特定の事例では、ブルーグレーのアクセントウォールの前には、大きな本棚が配置されています。壁の色調と、明るい棚板の色が鮮やかな対照を生み出し、そこからはクールで洗練された雰囲気が漂っています。


File788 2色で塗り分ける

この本棚は、縦材と横材に基本的には異なる色調が施されています。具体的には、クールグレイとビビッドなオレンジ系という2色の組み合わせが使われており、これは色環で言えば補色に位置づけられ、隣り合う色相同士のコントラストが強烈な印象を生み出します。一般的に、色のコントラストが強すぎると境界線がチカチカして見え、目に不快感が生じることがありますが、このデザインでは色相の近いクールグレイとビビッドなオレンジ系を選び、かつその明度差を抑えているため、視覚的な違和感が軽減されています。

特に、クールグレイが背面のアクセントウォールとなる壁のグレイ色に自然に溶け込んでいるため、空間にはビビッドなオレンジの水平ラインが効果的に浮かび上がります。これにより、色彩の調和と統一感が生まれ、視覚的に興味深い構成が実現されています。

考察

【File 720】税理士事務所の本棚 - 壁一面の本棚 奥行350 - マルゲリータお客様事例

切り絵の様な壁

マルゲリータの本棚には背板がなく、背面が開放されています。この特徴により、本が整然と並ぶ時や何も収められていない時に、背後の壁が透けて見えるため、通常の室内構成とは異なる新しい空間演出が生まれます。背景となる室内の壁はアクセントウォールとして様々なデザインを擁しますが、均等に配置されたグリッドラインが秩序を保ち、その中に美しく書籍の背表紙が配置されます。書籍の背表紙は、グリッドによって整然とした印象を与えつつ、白い室内に鮮やかに映えます。

特筆すべきは、このアクセントウォールが部屋内で占める面積が限られており、視界に現れる時間が短いことです。このため、独自の構成がより際立ち、瞬間的な美しさが強調されます。

本棚の設置箇所の壁面は、本の収納されているエリアとそうでないエリアとで大きな隙間があります。アクセントウォールは、前面に配置された本棚によってその効果が一部和らぎますが、依然として明確な壁の色がそこには残ります。この残った色が、まるで切り絵が敷き詰められたかのような形状を形成し、特に色が際立っているほど、その印象が強くなります。日々の本の取り出しや戻しによって、その形状は微妙に変化し、更に本棚のセルにオブジェクトを配置することで、新たな視点が生まれ、見え方がオブジェクトを超えた新しい次元に進化します。