ブックスタンド

SERIES

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ブックスタンドの目的は本の表紙を面として展示、表紙を見せることに尽きます。

本棚に並んだ本はその背表紙の並びが「見せる」形に繋がります。
本自体の厚さががあったり、シリーズ物として連続するデザインで並んでいたり、或いは特に書店であれば同じ本が並んでいるとそれなりに目を惹きます。
しかしそうでない場合は並びの中に埋もれていってなかなか表に出にくくなるのが実情です。
またその本が背表紙だけで目立とうとするとお互いにそういう本ばかりが並び同じ結果に陥ります。
しかも悪いことに見た目は混沌としていきます。

一方、表紙で本を見せる場合、特に本の装丁という視点で見るとその表紙のデザインには編集者、デザイナーの想いがその本の内容とともに伝わってきます。
ブックスタンドは本の表紙を見せるためのツールです。
いかにその本を顕すかにかかります。
書店で本を並べる場合は、沢山の本を並べたい、しかも面で出したい、が場所は限られるという相反する事象の中からそれでも多く見せたいその本の表紙を平面的から立体的に、またこれまであまり使われていなかったスペースも有効に活用すべく様々なスタイルを提案、本の表紙を「見せる」から「魅せる」へ、ここではその姿を模索しています。

本を魅せる

芝パークホテル ライブラリーホテル | ブックスタンド / Piega (No.04) | マルゲリータお客様の使用例 ブックスタンド 本立て 本展示 ディスプレイスタンド 展示什器

本の陳列方法には平積み、背だし、面出しの三通りがあります。
平積みは書店で一斉にベストセラーを平たく積み上げ、売れ行きの良さをアピールする方法ですが、ここでは関係ありません。
背だしは本の背表紙を見せる手法で、本棚に並べることが一般的です。
多くの本を効率的に陳列できますが、本自体が埋もれがちになりがちで、主に収納の目的があります。

一方で、面出し(または面陳)は本の装丁をそのまま見せる手法です。
特に美術書では、その内容をコンパクトにプレゼンテーションするため、美術書のデザインが最も注力される部分です。
面出しは本の装丁デザインを強調し、その本の魅力を一枚で表現する手法です。

ブックスタンド

黒子の様な黒い展示ツール

一般的なアクリル製のブックスタンドとスチール製のブックスタンドにはそれぞれ特徴があります。
アクリルは透明で軽量、取り扱いが簡単な素材ですが、紫外線に弱いため経年劣化が起こし内部が白濁する恐れがあります。
一方でスチールは頑丈で重いため、大きな負荷にも耐えられます、しかし薄い板では簡単に曲げやすいため無味乾燥な印象を与えてしまう可能性があります。

スチールを本来の強さと鉄らしさを引き出すためには、十分な肉厚を持たせる必要があります。
これによりスチールは曲げることで弾力を生み出し、小さな断面でも大きな負荷を支えることができます。
また、比重が重いため、アンバランスな形状でも対象物をしっかりと支えることが可能です。

このようなスチール製のブックスタンドは、書籍やカタログ、パンフレット、タブレットなどを店舗や展示会で展示する際に利用される展示什器として活用されています。
展示什器は商品や情報を引き立て、自らは目立たない存在として役立つことが期待されます。

スチールは曲げることによりそこに弾力が生じるため小さな断面で大きな負荷を背負い込み、また同時に比重も重いため、アンバランスな形状をしっかりとその重さで支える事も出来ます。
この一連のツールは書籍、カタログ、パンフレット、タブレットのディスプレイなど、店舗や展示会における展示什器として使われ、展示するほどに自分の姿が見えなくなっていく黒子のようなツールです。

壁から本を持ち出し面で展示するブックスタンド

従来の方法では、壁にブックスタンドを取り付ける際には、バー状のコの字型あるいはL字型の形状が一般的で、そこに本を載せて垂直に立てかける手法が一般的でした。
また、有孔ボードにフックを取り付けて本を飾る手法もよく見られました。
しかし、これらの方法では飾られた本が壁に対して平行になり、展示効果が制限される傾向がありました。

Piega Wallは、壁に向かってブックスタンドを配置する際に、従来の方法とは異なり、人の目線の高さに合わせて3段階の持ち出し長さで構成されています。
背後にあるローレット加工されたハンドルはトレイを固定するためのもので、回転範囲内で角度を自由に固定できます。
これにより、展示物を展開する際に最上段から下にいくにつれて角度が水平に近づき、視線から見て自然な形で展示物を見下ろすことができます。
同時に、壁面を有効に利用しながら、面出しのブックスタンドとしても機能します。

面を見せて飾る

【File780】 書棚に囲まれたバー - Shelf 壁一面の本棚 奥行350mm- マルゲリータお客様事例

スチールプレートと合板の組み合わせから成る、斜めに傾けた木製のディスプレイスタンドがこちらです。
書籍、カタログ、パンフレット、CDなど、店舗や展示会における展示什器、ディスプレイ什器として幅広い用途にご利用いただけます。
このディスプレイスタンドは、積層合板と曲げ加工されたスチールプレートの組み合わせにより、本を面で傾けて自然な形で展示することを可能にしました。

製品のコンセプトは、「面に対して投影する」ことで、同じ面に異なる要素をプロジェクターのように映し出すことです。
各面は照射面として金属のバーまたはゴムのフックを取り付け、ディスプレイボードとして展開します。
同じ形状の面に対して、照射物の配置を変えることで新たな用途を生み出す試みがなされています。
さらに、角度を変えて上から見下ろせるようにするか、動かして角度調整が可能な二段重ねのデザインも採用されています。

実例

File575 芝パークホテル

銀座蔦屋書店の監修により、ライブラリーホテルとして芝パークホテルがその新たな業態を静かに展開しておられます。
ここでは、宿泊客以外の方も利用できる共有スペースとしてのホワイエやラウンジが用意されており、主に美術書や写真集などが展示され、ゆっくりと座って読書を楽しむことができます。
また、各宿泊フロアには、そのフロア専用の小さなライブラリーが設けられ、同様に美術書や写真集などを手に取って鑑賞することができます。

美術書、画集、写真集は単なる順序通りに読むものではなく、ビジュアルを通して作り手の世界に没入することが魅力です。
作り手の時代背景や環境に触れ、断片的であっても、また一冊通してでもその世界に浸ることができます。
特に、アーティストが知られざる素晴らしい作品を披露している場合、その発見は後にホテルとの関連で何度も思い返されます。
優れたアーティストは多くの画集で紹介されており、どの入口からでも再び彼らと出会う可能性が広がっています。
芝パークホテルは、アートとの魅力的な邂逅を提供する場として期待されます。


File243 東京都写真美術館ディスプレイ什器として

東京都写真美術館は、日本初の本格的な写真映像文化施設として創設された美術館です。
写真一般の美術館としては、日本で最初のものであり、個人名を冠したものを除くと歴史的な存在と言えます。
ここでは、図書室において展示スタンドとしてマルゲリータのブックスタンドが活用されています。
これは低い本棚の上部や本棚のコマ内部に配置され、書籍やファイルが美しく展示されています。
また、木部の色が本棚と調和しているため、周囲との調和が実現されています。


File557 角川武蔵野ミュージアム

角川武蔵野ミュージアムは、KADOKAWAと埼玉県所沢市に2020年11月にオープンした博物館・美術館・図書館・アニメミュージアムが融合した文化複合施設です。
4階のエディットタウン-ブックストリートには、その名の通りたくさんの本が凝縮された図書空間です。
非日常の雰囲気を盛り上げるエリアで構成され、9つの文脈、テーマにそって配置されていて、書店や図書館とは異なる視点のものが並びます。
その本の展示にマルゲリータのブックスタンドをお使いいただいています。


File230 大洋金物ショールーム展示什器

大洋金物さまは、浴槽や洗面器、キッチンなど水まわり製品を中心に世界の上質なデザインアイテムを輸入販売しておられます。
写真は港区南麻布にあるショールームです。
ガラス棚上段、カタログが置かれたA4ブックスタンドの様子です。


File669 トヨタ博物館 貴重資料室(非公開)

トヨタ博物館はトヨタ自動車創立50周年記念事業の一環として、1989年に開館した博物館です。
ここでは19世紀末から欧米日で出版された自動車に関する貴重な雑誌や資料がご覧いただけます。
中でも目を惹く資料は壁面のガラス棚に展示し、その展示ツールとして「Piega A4ブックスタンド」「Piega 本を開いて見せるブックスタンド」をご利用いただいています。


File784 フェアフィールド・バイ・マリオット(マリオットインターナショナル)

このホテルチェーンには、地元の歴史と名品を静かに紹介するコーナーが一貫性のあるブランディングで統一されています。
ここでは、「Piega ブックスタンド」が効果的に活用されています。
ホテルの建物の構造や内部の造作には、独自のルールが制定されており、各ホテルが異なる外観を持ちつつも、共通のディテールが統一されています。
これらの統一されたディテールを有効に活かし、書籍の展示台として「Piega ブックスタンド」が採用されています。

考察

本の装丁

(株)ブックウォール オフィスの本棚 - Shelf 壁一面の本棚 - マルゲリータお客様事例

本の装丁は、書籍の全体的な印象を決定づける役割を担っています。
書籍が内容で勝負するのはもちろんですが、装丁はその第一印象を左右し、読者に対して魅力的で興味深い本であることを伝えます。
たとえば、本屋で無目的に物色する際、目に入る最初の要素が装丁です。
美しく洗練されたデザインやカラフルな表紙は、読者の視線を引きつけ、手に取りたくなる魅力を持っています。
これが「ジャケ買い」の現象であり、本が持つ視覚的な魅力が購買行動に大きな影響を与えているのです。

「ジャケ買い」とはその昔LPレコードの時代によく言われていた言葉です。
レコードを買う際にそのジャケットのデザインに惹かれて購入する(してしまう)という行為です。
当然ですがレコードの場合には聴くまで分からないのでその当たりはずれは多いにあります。
しかし本のジャケ買いは中身も見れるのでレコードに比べるとその確率は格段に上がります。

また、装丁は本のインテリアとしても機能します。
同じシリーズのカラフルな表紙を揃えて本棚に並べることで、空間に楽しさや統一感をもたらし、読書環境を豊かにします。
最近では、古典文学なども新しい装いを纏って再注目を集めることがあります。
漫画家とのコラボや新装版の発売など、装丁が作品の魅力を引き立て、新たな読者層を引き寄せる役割を果たしているのです。
要するに「装丁」は単なる外見だけでなく、読者との最初の出会いを演出し、本の魅力を引き立てる重要な要素と言えるでしょう。

装丁とブックデザイン

(株)ブックウォール オフィスの本棚 - Shelf 壁一面の本棚 - マルゲリータお客様事例

本の装丁はその外側のデザインに焦点を当てる一方で、ブックデザインは外観だけでなく、そのコンテンツのビジュアル的なデザインも含めたトータルなデザインを言います。
表紙は本の顔であり、そのデザインが本の売り上げに影響を与えることもあります。
そのため、読者の目を引く印象的なデザインが求められます。
一方ブックデザインは著者の作品への理解を深め、作品の魅力を伝える上で不可欠な存在となっています。

ブックデザインは、本の表紙や扉、帯などのデザインから製本材料の選定まで、本を制作する一連の工程を担当します。
書籍の内容を把握した上で、デザインにおいては、イラストを使用するか、写真を採用するか、また表紙タイトルの書体や色、本文の文字サイズや行間の幅などを決定していきます。
手に取った際に感じる重さや質感も本の印象を大きく左右するため、紙の素材や厚みなども考慮しながらデザインが進められます。
読者が本を手に取るかどうかは表紙デザイン次第とも言え、本の購入を左右する要因となります。

ブックデザインは、興味のない人にもアピールし、購買意欲を引き出す重要な仕事です。

ブックスタンドの役割

【File 784】ホテルのロビーに - Piega ブックスタンド- マルゲリータお客様事例

ブックスタンドはその本の表紙を見せるツールです。
しかしそこでは同時に「手に取って中身を見せる」行為を暗に推しています。
更に言えば「手に取って中身が見たくなる」様な装丁、ここが大事です。
前述の様に本のデザインはその装丁だけでなく中身のブックデザインも重要です。
「知らなかった」もしくは「買う気が無かった」客に対してその表紙をきっかけに手に取らせ、中身を見させ、購買に繋ぐ。
その橋渡しの一部をスムースに行えるブックスタンド、これが理想です。
あくまでも橋渡しですが本の表紙の見え方がいかに心地よいものであるか、そこにブックスタンドのあるべき姿があります。