廊下を有効に活用する

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住宅に於いて廊下の果たしている機能はリビングを含めた個々の部屋を繋ぐ動線の役割があります。従ってそれぞれの部屋に何らしかの機能があるとすれば廊下は単に動線だけの機能になります。すなわち部屋数が多いほど必然的に廊下は長くなりその結果そこにある部屋の面積は減る事になります。ここではその廊下に動線以外の機能を持たせるべくそこを有効に使うことに関しての提案です。

廊下とは

映画館の様なホームシアター – Shelf 壁一面の本棚 奥行180mm – マルゲリータ使用事例

例えばマンションであったりオフィスビルであったり、そこの専有部分の床面積は判断基準として絶対的に必要なものです。分譲主であれ貸主であれその専有面積を如何に広く取るかがその後の収支の計画を立てる上でも大変重要です。一方で建物全体の面積が決まっている中でその専有面積を広く求めた結果追いやられていくスペースが共有面積です。その一部が廊下です。それをそのまま住宅に置き換えたものが住居内に存在する廊下です。

建築の設計をするにあたって、まず廊下を考える、と言うことはあり得ません。設計段階で盛り込むべきい内容はまず必要諸室と呼ばれるクライアントが必要としている部屋、及びそのボリュームです。即ち専有部分です。廊下は結果としてその必要諸室を繋ぐ手段に過ぎません。全体の面積が限られている中に於いては廊下の面積、その長さは短いほど必要な部屋のその面積が回せるので如何に廊下を短くするかは基本的な建築計画の第一歩です。ここで言えることは廊下は短ければ短いほど良い、そもそも廊下には機能的なものは求めない、と言う考えです。とは言え廊下は存在し、そこが何かしらの機能を有すれば住宅全体としての使い勝手も向上します。

最近見かけるリフォームで2室を1室にして広い室内空間を確保する、と言う例を見かけます。確かに部屋は広くなっていますがそこに一番寄与しているのは実はそれまであった面積を献上している廊下です。即ちそれまで機能を持たないとされていた箇所を併合する事により機能的に必要な部屋を更に大きくしたと言う事実です。

ここでは廊下には本当に動線以外の機能はないのか、また廊下の存在を受け入れたままでその廊下に持たせるべき機能はないのかを考えたいと思います。

廊下の用途

部屋と部屋を繋ぐ動線

廊下は各部屋へのアクセスや効率的な動線を提供することで、そこに住んでいる人は家の中を効果的かつスムーズに移動する事ができます。この役割は日常の生活において非常に重要であり、快適な居住環境を形成する上で欠かせません。

プライバシーの確保

廊下は各部屋に面している場合、部屋との物理的な仕切りとして機能します。これにより、そこに住んでいる人のプライバシーが確保され、家族といえどもその視界を完全に遮断した安心感を提供します。

雑音や騒音の軽減

また廊下を介することで各部屋が出す音を段階的に遮断する効果もあります。部屋間の間仕切り壁一枚だけでなくそこに廊下が入る事で音量は減衰し狭い家の中でも一定の効果は齎します。

収納スペースやクローゼットとしての機能

廊下には収納スペースやクローゼットを配置することも出来ます。これにより、物の整理や保管がしやすくなり、部屋の中をより整然と保つことができます。衣類や小物の収納だけでなく、季節ごとの衣替えや必要なアイテムの保管にも有効です。
総じて、廊下は住宅の機能的で快適な居住環境を形成する上で欠かせない要素であり、その役割は単なる通路を超えて、住んでいる人の生活に多岐にわたる影響を与えます。

住宅の廊下の様々な使い方

【File 690】アルコーブに設置された壁面本棚- Shelf 開口部のある本棚 - マルゲリータお客様事例

廊下が直角に曲がっていたり、アルコーブのようなスペースが存在する場合、そこには通常、溜まりがちなスペースが形成されます。特に2つ以上の部屋に面する廊下や階段に面する廊下では、このようなスペースが生じることがよくあります。こうした箇所を上手に利用することで、デスクを備えた作業スペースを創出することも出来ます。

このデザインの利点は複数あります。まず、空間を有効に活用することができ、家の中で見違えるような機能性と効率性が生まれます。これにより、デスク周りの整理整頓がしやすくなり、作業効率が向上します。また、このような隠れたスペースを利用することで、通常の廊下や階段スペースにはない静かで集中しやすい環境を作り出すことができます。

さらに、デスクを配置することで、そのスペースを個人の作業スペースや書斎スペースとして利用でき、家族の中で個別の活動ができるようになります。この方法は無駄なスペースを最小限に抑えながら、住宅内での機能的なエリアを創出する優れた考え方と言えます。

家族の写真やポスターの展示空間として

額装された家族の写真やポスターは、思い出をそこに反映させます。廊下が個性的でパーソナルな雰囲気に溢れ、そこに個性が際立ちます。
また豊富な色彩やデザインの写真やアートは、廊下に視覚的なアクセントを与え、空間を豊かにします。特に廊下は通過する空間であるため、気付かないうちに意識の中に入り込みます。家族や住人が日常の喧騒から離れて、廊下でほっと一息つける空間となります。写真を飾ることで、家族が共有する思い出や特別な瞬間を廊下に展示することができます。これは家族の共有する楽しみを提供します。季節やイベントに合わせて写真やアートを変えることで、季節感やイベントの雰囲気を楽しむことができます。

壁一面本棚を使った廊下の収納

廊下を有効に使う – Shelf 壁一面の本棚 奥行350 – マルゲリータ使用事例

廊下の幅と本棚の奥行き

後付け収納は既製品の収納を購入して後から設置する方法です。これは工事不要で手軽に収納スペースを確保できますが、幅の狭い廊下に設置すると、その分の廊下の幅員は狭くなります。本事例では、後者の「後付け収納」の手法をとり、奥行180mmの本棚を廊下に置かれたケースが殆どです。

建築基準法では、廊下の最低幅員を750㎜と規定していますが、実際のコンクリート住宅、たとえばマンションの廊下では通常850mm以上確保されています。この寸法を考慮すると、奥行180mmの本棚を配置することは、機能上の問題を引き起こさず、ギリギリのサイズと言えます。こうした工夫により、限られたスペースを最大限に活用しつつ、廊下の利便性を損なわないように計られています。

工事を伴わないリノベーションで機能が追加される

壁一面の本棚を室内に設置するにあたっては内装工事を必要としません。そもそも内装工事が必要になるケースはそれを行うことでどこかの部位を外す(壊す)、戻す(復旧させる)と言う付随工事が必要な場合です。壁一面の本棚で間仕切りを行う場合はそれを天井に固定するだけの所作なのでそこには内装工事は生じません。これによるコスト削減の効果は大きく一般的に考えられる工事費の1/2から1/3の費用で賄うことが可能になります。

壁一面本棚を使った廊下の利用の仕方 実例

収納

File306 ワンルームマンションの廊下を利用したコミック収納棚

法律的には、廊下の最低幅員は建築基準法で750㎜と規定されていますが、実際のコンクリート住宅、例えばマンションの廊下では通常850mm以上確保されています。この基準を考慮すると、奥行180mmの本棚を配置することは、機能上の問題を生じさせず、ギリギリの寸法と言えます。こうした工夫により、限られたスペースを最大限に有効活用しながらも、廊下の使い勝手を損ねないように気を配っています。


File611 戸建て住宅の2階のアルコーブに

アルコーブとは窪みのことです。 最近ではマンションの玄関が部屋側に窪んでいる空間をさすことが多いですが、室内においてもアルコーブは部屋の一部が窪んでいてそこが部屋の一部ではありながら独立した空間として使えることが出来る、その様なスペースをさすこともあります。アルコーブはマンションの入口であれば、外部からの視線を遮ることができる点と、玄関扉を開け閉めする際に廊下を歩いている人がいても通行に支障をきたしません。 一定の広さのあるアルコーブの場合には、そこを有効な空間として活用することもできます。


File283 廊下を有効的に使った大容量コミック収納

廊下に収納を組み込む利点は、行き止まりがないため、押し入れやクローゼットのように使えることです。通常、廊下の幅が750mm以上確保できれば、廊下としての機能は損なわれません。この条件を考慮した上で、奥行180mmのコミック収納棚が設置されました。棚の背面は巾木の厚みに合わせてカットされており、壁面に密着して設置できるようになっています。


File640 廊下を有効に使う

部屋を広々と感じさせるために、全体をワンルームに統合したり、廊下のない間取りに変更する傾向が増加しています。ただし、廊下は通路の機能だけでなく、部屋同士が直接つながっている場合よりも、音や湿気、生活臭などが直接に伝わるのを軽減する重要な機能があります。
特に会計事務所など、必要な書籍や資料が多い職種では、住居として設計された室内の収納スペースが不足することがあります。そのため、廊下に組み込まれた収納や棚を設けることで、事務スペースを削減せずに収納スペースを拡大できる可能性を含みます。


File690 廊下のアルコーブに

エントランスに位置するアルコーブは、マンションの入口において外部の視線を遮る役割を果たし、玄関扉の開閉時に廊下を歩いている人に通行の妨げとなりません。また、十分な広さのアルコーブが存在する場合、その空間を有効に活用することも可能です。この具体的な事例では、廊下に設けられた広々としたアルコーブに、計画段階から考慮されたかのように、幅6コマの本棚が自然な形で収められています。


File721 フィギュアに囲まれて(自宅編)

この本棚はShelf 壁一面のA5判本棚 奥行180mmで、廊下は玄関からリビングまで直線的に伸びています。この本棚には主にコミック本の全集が収められており、その光景は本棚の正面からではないと観察することが難しい仕組みとなっています。玄関のドアを開けて廊下を進んでいくと、リビングの一部しか見えず、その先に進むほどにコミック本の一冊一冊が視界に現れ、最終的には本に覆われた様子が目の前に広がります。この動的で効果的な演出により、廊下の幅が最小限でも、その狭さを感じさせないような効果が生まれています。

展示

File323 汗牛充棟の書斎  廊下を利用した壁面本棚

玄関から室内へ続く廊下の左側の壁は、壁一面にわたって美しい本棚で装飾されています。廊下の突き当たりには、光のスリットがガラスブロックで形成されており、その右側の壁には2枚の額縁入り写真が掛けられています。また、廊下の曲がり角にはスツールが配置され、これらが注目のフォーカルポイントとなっています。廊下はこの地点でL字型に曲がり、そこから奥へ続く廊下の壁には造作の本棚が設けられています。

作業スペース

File785 2階の踊り場スペースに

この本棚は、設計段階で設計図に取り入れられ、工事が進むにつれて寸法が確定され、竣工後にはその空間に完璧に収まるサイズの本棚が搬入され、お客様と共に組み立て取り付けが行われました。その結果、まさに造り付けのような形で、空間のアルコーブにピッタリと収め、本棚が壁面と同じ平面に配置される美しい仕上がりとなりました。この木質系の色合いが白い壁を縦に切り取るようで、非常に印象的です。

考察

直線的な壁に沿わせる

廊下の幅が限られている場合、スリムな本棚を選ぶことがまずは必須です。それによりスペースを有効活用できます。奥行きの浅い本棚を壁面に取り付けることが最適と言えます。このスリムな本棚を考えた場合、そこに置かれるであろう本の種類を考えると小さいものではコミック本、大きくてもA5サイズの単行本と考えられます。奥行180mmの本棚はその意味で非常に適したサイズです。更にそれを天井まで立ち上げる事で収納量は最大限まで拡がります。

アルコーブを利用する

アルコーブとは壁に設けられた窪んだスペースを指します。これは、部屋や建物の構造において、壁面にくりぬかれた空間や凹み、または隅に作られたくぼんだ場所などを指す用語です。アルコーブはしばしば収納や展示、デコレーションのために活用され、壁の一部をくりぬいて作られることがあります。家具や本棚、彫刻、花瓶などが配置されることが一般的です。
本を収納するだけでなく、アルコーブ内の利便性も考えに入れ、必要なものに簡単にアクセスできるように配置する事も重要です。またアルコーブ内にはダウンライトが取り付けられているケースが殆どです。その照明が邪魔にならないか、あるいは本やコレクションを引き立たせる事になるか十分な検討は必要になります。

設計段階から埋め込む

ダイナミックな構成の戸建て住宅の中に 壁一面の本棚 Shelf マルゲリータ使用事例

その設計段階から廊下の壁面に本棚を埋め込むスペースを確保しておくことは最も効率がよい手段です。それは出来上がった廊下の壁面と本棚の前面がフラットに収まる事も当然ありますが、建築計画に於いては隣接する部屋の収納、クローゼット、あるいは配管スペース等がその部屋の壁面をフラットに収めようとする場合に意外とデッドスペースを予め孕んでいるケースは多々あります。廊下に限らず様々な薄い収納ツールを用意する事は計画上もスムースに進む場合も多く一石二鳥の効果が得られる場合が非常に多くあります。