3面本棚部屋

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大量の本を自宅に保管する場合、それを整理するためには複数台の本棚が必要です。複数の本棚をどのように配置するか、一つの解決策として、すべてを一箇所に集約し、その場所に凝縮させるという方法があります。これが3面本棚部屋の発想の始まりです。この考え方は、かのメンタリストのDaigoさんが「その部屋に這って入ってもいい」というオーダーを受け、一つの本棚を可動式にしてそこをその部屋への出入りの場とすることを提案、それを実行に移したことから始まりました。

完成した3面本棚部屋の画像が当サイトのみならずいくつかのメディアで公開され、多くの方から同様のリクエストが寄せられ、それに応えて展開されてきました。ここでは、その一部をご紹介し、さらに3面を本棚にするアプローチを再考していきたいと思います。

「3面本棚部屋」は、部屋の壁の3面を本棚で覆った部屋を言います。この配置では、床から天井まで、また壁から壁まで本棚が広がり、部屋全体がまるで本で埋め尽くされたかの様な形になります。通常、このデザインはカスタムメイドであり壁に合わせて造作家具として本棚が組み込まれることが一般的です。

ここではマルゲリータの壁一面の本棚を使って3面を取り囲む、置くだけの構成のご紹介です。

3面本棚部屋の魅力

3面本棚 | メンタリストDaiGoさんの本棚(No.05)

静謐な空気

3面本棚に囲まれた部屋は、静謐な空気を醸し出します。多くの本の背表紙が語る自己の成長やその過程を浮かび上がらせながらもその物語が無言で語られている空気を作ります。一方で本は静かな時間やリラックスした瞬間に寄り添います。本棚で囲まれた部屋は、読書や考え事をするのに理想的な静謐な場所となり、落ち着いた雰囲気に包まれます。

その様な本棚で囲まれた部屋は、当然ながら読書の拠点となり、読書が好きな人にとっては、リラックスした環境で本を楽しむことができる唯一の場所になります。

大量の蔵書の収納

本をたくさん読む人や蔵書が多い人にとって大量の本を収納できることは理想的です。また、本を中心に据えたインテリアは知的であり、読書や学習の空間としても使いやすいです。このようなデザインは、ライブラリや書斎、読書室として機能するだけでなく、自分の趣味やコレクションの展示などにも大いに利用されます。

本棚には様々な本が収められており、それは所有者の趣味や興味を反映しています。部屋を本で満たすことで、個性的で豊かな趣味や好みが表現され、訪れる人にその一面を見せることができます。

また本棚は整理整頓の手段としても優れています。本を棚に収めることで、部屋全体が整然とし、無駄なものが少なくなります。これにより、室内空間が落ち着いたものになります。

3面本棚部屋を作る

本棚にあわせて設計されたご夫婦の書斎 | 開口部のある本棚 / Shelf (No.07)

例えば自宅の部屋を3面本棚部屋にするとしたらどのくらいの本が収納出来るか、そのシミレーションです。

壁面4面のうち1面は開口部に面してそのままワークデスクとして使用、更にその向かいの壁面の一部は出入りの為のドアという設定で残った壁面に奥行250mmの本棚を設置するとしてその面としての長さ、及び総コマ数は以下の様になります。1コマのサイズはマルゲリータ壁一面の本棚のセルのサイズです。

  • 4.5畳(6.7m)  137コマ 
  • 6畳(8.5m)  175コマ
  • 8畳(9.4m)  193コマ

設定条件としては
・1面は開口部に向かい、そこにはワークデスクを設置、本棚は置かない
・エアコン、コンセント、スイッチ等の干渉物はとりあえずは考慮に入れない
・部屋の出入口のドア幅は900mm程度とする
・天井までは目一杯7コマの本棚が設置できるものとする
という設定条件です。

移動書架との相違

大容量の本棚という意味では移動書架という選択肢もあります。ここでは移動書架と本棚に囲まれた部屋の違いについて考えてみます。

学習室+閲覧室 | 壁一面の本棚 奥行350mm / Shelf (No.95)

可動性とアクセス性

移動書架は車輪やレールを備えており、そのレールの軌道を動く移動可能な構造です。これにより、本棚をスライドさせて必要な本にアクセスできます。空間の有効活用が可能で、必要に応じて書架を開いたり閉じたりできます。一方で通常の本棚に囲まれた空間は、固定されています。本が壁に囲まれているため、その配置は変更が難しく、可動性は制限されています。

空間の利用目的

移動書架は効率的な収納とアクセスを可能にするため、特に大規模な書庫やアーカイブ、図書館などで使用されることが一般的です。

本棚で囲まれた空間は、主に居住空間や個人の書斎、読書室として利用されます。リラックスした雰囲気での読書や学習のために設計されることが一般的です。

デザインと雰囲気

移動書架は機能性が重視されることが多く、外観よりも実用性が強調されます。言い換えれば住宅で使われる事には違和感があります。

本棚に囲まれた空間は、インテリアデザインや雰囲気の面で重要視されることがあります。本の表紙や装丁、本棚の配置が部屋全体の雰囲気を構築する一部となります。

これらの相違点から、移動書架は主に大規模な書庫やアーカイブ向けに設計され、機能性が強調されます。一方で、本棚に囲まれた空間は、居住空間や読書スペースとしての機能性だけでなく、デザインや雰囲気の要素も併せ持ちます。また移動書架の場合はそのものの構造はもとより施工も伴いますのでコスト的にはそれなりの規模がないと効果は期待出来ません。

実例

File438 3面本棚部屋

この部屋は3面が本棚で構成されています。コの字型に並んだ真ん中の本棚にキャスターがついていてその本棚全体を動かすように開けて部屋に入ります。部屋に入ったら本棚を閉じるとそこは完全な密室状態の本棚部屋になります。メンタリストDaigoさんの提案を具現化した3面本棚部屋の第一号です。


File480 壁3面が本棚の書斎

窓に向かう位置にワークデスクを設置、それを取り囲む様に3面の壁に本棚を配置しています。入り口のドアのぶぶんだけを除いてすべての壁面に本棚が巡らされています。ワークデスクの高さはその窓の面台に合わせる高さでそれがそのまま連続する形で外に向かいます。狭いスペースを隙間なく網羅した究極の3面本棚の書斎です。


File299 3面が壁一面本棚の部屋

比較的広いベッドルームの3面に本棚を設置したケースです。室内が広いのとベッドからの距離があるので本が溢れている感覚はなく1面に向かえば自然な感じがします。それは本棚自体が離れていて距離があり、それぞれの面が独立したかの様に見えるからかもしれません。本に囲まれた落ち着いた寝室です。


File447 2つのDEN

DENは床から一段上がった位置にあり、右手に見ると奥に進むと、直角に並べられた壁一面のA5判本棚が広がっています。この空間は、本棚のセルに合わせて窓の位置も調整され、心地よい雰囲気が漂っています。また、その本棚と直交する形で、開口部のある本棚が配置されており、大きなワークデスクと大型モニターが設置されています。DENのうち一室は、3つの面が本棚で囲まれた構造となっており、アプローチは吸い込まれるように心地よくデザインされています。


File549 4面を本棚に囲まれた書斎

戸建住宅の一室、そこにある2箇所の窓、入り口ドア、えあこんをかわしながら基本的にはロータイプを中心に配置された4面が本棚の部屋です。そのうちの1面はワークデスクを兼用、静かな書斎を構成されています。

File488 ロータイプで腰壁を作る

室内の3面を腰壁の高さのロータイプ本棚で囲まれてます。ロータイプの本棚なのでその上部は開放され、額装されたアートが上品に飾られています。またこの部屋にある窓も自然な形で交わして力の入らない静謐な空間になっています。


File458 4面が本棚に囲まれたワークスペース

工務店のワークスペースは、4つの面が本棚とワークデスクで構成され、その中の一面には開口部があり、そこからは玄関が見えるようになっています。基本的な構造は壁一面の本棚であり、これまでにない斬新なデザインとなっています。加工や組み立てにおいても、工務店の協力を得て、間仕切り壁とワークデスクを兼ね備えたコンパクトな配置が展開されています。


File448 書架に囲まれた閲覧スペース

ここは閲覧室と学習エリアが一体化した図書室です。向かい合わせに配置された壁一面の本棚は、それぞれがキャスターを備えており、必要に応じて自由にレイアウトを変更できます。また、その周囲にも壁一面に本棚が配置され、コーナー部にはカスタムメイドの閲覧机が配置されています。


File336 壁3面を本棚に

洗練された室内デザインを特徴とするのは、ワークスペースの3つの壁が本棚によって構成されたスタイリッシュなインテリアです。入口から入る際は、キャスター付きの可動式本棚を移動させて入室し、同様に本棚を移動させてキッチンへ進むことができます。この計画では、スムーズな動きを犠牲にしてでも、壁面全体を本棚で埋め尽くすことが求められています。壁一面の本棚は、キャスターベースの上に載せて一部を可動式にすることで、この部屋への出入りが本棚の移動によって容易になっています。

考察

クリエイティブな仕事をされる方に

クリエイティブな仕事に従事する人々は、多くが書斎を本棚で囲んでいます。書斎での作業は、その人が情熱を注いでいる分野に没頭し、日々のストレスに追われずに深く考え込むか、アイディアを形にする方向に向かう傾向があります。このような作業において、即座に脳内データを引き出せる環境が重要視されています。言い換えれば、考え事の合間に脳内のハードディスクから情報を引き出し、それがランダムアクセスメモリーのように即座に利用できるような書斎の構造が理想的です。データが瞬時に取り出せる環境は、仕事がより効率的に進む瞬間を生み出す可能性があります。

そして、書斎を取り囲む本棚は、クリエイティブな仕事において自分を支える要塞のような存在です。仕事に集中する際、書斎に向かう前から未来が明確になります。しかし、途中で迷ったり、アイディアがまとまらなかったりするとき、頼りにできる存在が背後に広がる書籍です。一人で立ち向かっているわけではなく、知識の宝庫となる書籍がバックアップしていることで、自分が不安に感じる瞬間に頼ることができます。書棚には自分が選んだ本が並んでおり、それらは何らかの理由で選ばれています。つまり、背後の本棚は自分をサポートしてくれる存在であり、そうした想いが感じられることでクリエイティブな仕事が加速します。

一方で、会社の業務が終わらず、持ち帰り作業や残務処理のようなネガティブなクリエイティブとは真逆の方向の作業を書斎で行う場合、書斎は要塞ではなくお仕置き部屋のような雰囲気に変わります。この場合、気持ちはもちろん乗りませんが、それに加えて負のスパイラルが発生しかねません。やはりマイナス方向の仕事は、広い卓上で順次片付ける方が望ましいと感じます。ここは気をつけなければなりません。

比較的広い部屋に於ける3面本棚部屋

【File 800】3面の壁を本棚で囲う - Shelf 壁一面の本棚 奥行350mm - マルゲリータお客様事例

広い部屋に独立した本棚をそれぞれの面に配置し、書籍を整理する場合、まず各本棚に異なる本の種類を配置することができます。例えば読み物、写真集、ビジネス本など、大まかなジャンルごとに分けることで、その日の気分やニーズに応じて向かうべき本棚を選ぶことができます。また、本の整理も容易で、各本棚が離れて配置されているため、異なった角度から見ることができるのも魅力の一つです。