間仕切りで利用する(住宅編)

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住宅の大きさを表す指標として一つはその面積、そしてもう一つに*LDKという表記があります。しかし両者とも実際に使える有効な面積との数字上の乖離が多かれ少なかれ存在します。面積の差異に関してはここでは割愛するとして*LDKという指標に関して。これは言うまでもなく個室が*室にリビングダイニングとキッチンがある、と言う表記です。即ち個室が3つあれば3LDK、5つあれば5LDKです。そのサイズは関係ありません。同様な指標上勘違いしがちな表記に*畳と言う表記があります。畳*枚分のサイズという意味です。ここでもその畳自体のサイズの規定はありません。即ち部屋は狭くなるほどに*LDKの*は増えていくという妙なレトリックです。

近年の住宅の間取りもこうして徐々に細かな沢山の部屋より大きな一室を作る側に少しずつ変わってきている事も確かです。多くの日本人がこのことは知ってはいます。知っているからこそ「当初は部屋を細かくしないで後々必要に応じて細かくする(間仕切る)」という考えが必然的に生じています。

居室の中に間仕切りを新たに設置する

既存の住宅の居室の中に間仕切りを新たに設置する際の具体的なケースとして以下のようなケース、および対応が考えられます。

リビングとダイニングの仕切り

リビングとダイニングが一つの大きな空間となっている住宅で、異なる用途のために仕切りを設けたい場合。特に近年はリビング内に家族のワークスペースを設けこれまでのそれぞれの個室を単純に寝室としての機能で使うというケースです。

【File 662】間仕切りとしてリビングを仕切る - マルゲリータお客様事例

住宅においてリビングを間仕切ることが必要な理由はいくつかあります。以下はその主なポイントです。リビングは家族や来客が寛ぐ場所であり、他の部屋と比較して一番公共性が高い空間です。しかし、時にはプライバシーを確保したい瞬間もあります。例えば、リビングで寛ぐ家族と、仕事や勉強をする場合、仕切りを使ってプライバシーを守ることができます。またリビングは多くの機能を兼ね備えることがありますが、異なる用途を同時に行う場合、それが常態化する際には何かしらの仕切りが必要です。例えば、リビングでの寛ぎと、テレビ会議や仕事をするスペースを仕切りで分けることができます。またそこがが大きな開放的な空間である場合、集中して作業や勉強をするのが難しいことがあります。仕切りを設けることで、特定のスペースを集中作業に利用でき、生産性や学習効果が向上します。

寝室の一部をワークスペースに仕切る

在宅ワークが必要になり、リビングや寝室の一部を仕事のために使わざるを得ない場合。

【File 762】間仕切りの一部にカウンター付き本棚を使う - Shelfカウンター付き本棚 - マルゲリータお客様事例

可動式の仕切りを使用し、必要に応じて開放感を保ちつつも仕事スペースを作成。或いはそれとは全く逆で室内の片隅に籠る形。寝室そのものが共有のものか一人で使用するものかによってもその使い方は分かれ、当然間仕切りの形態も大きく異なります。

寝室の一部をワークスペースに変えることは、在宅勤務や仕事を行う上で効果的な方法です。寝室は通常、他の生活空間と比較してプライベートな空間です。そのため、仕事や勉強に集中しやすく、外部からの干渉が少ない環境を提供します。一方でそこには寛げる環境が整っています。ワークスペースを寝室に設けることで、快適な椅子や机を使い、仕事に取り組むことができます。

寝室の一部をワークスペースに変えることで、必要に応じて寝室としての機能も維持しつつ、仕事を行うことができます。柔軟性があり、日々のニーズに合わせて使い分けることができます。家族と同居している場合、寝室での仕事が孤立感を生む可能性があります。コミュニケーションのためにも、定期的な休憩や他の共有スペースの利用が重要です。寝室はリラックスや休息のためのスペースでもあります。ワークスペースを導入する際にも、寝室の本来の役割を損なわないような注意が必要です。仕事や勉強においては十分な光が必要ですが、同時に夜間は十分な暗さが必要です。適切な照明やカーテンの利用で、これらの要素を調整することも必要です。

子供部屋の仕切り

これまで兄弟姉妹が同じ部屋で生活してきたがそれぞれの成長に伴って個室が必要となった場合。

【File 760】本棚の間仕切りで子供室を作る - Shelf 壁一面の本棚 - マルゲリータお客様事例

兄弟姉妹が同じ部屋で寝る場合、それぞれのプライバシーを確保するために間仕切りが必要です。兄弟姉妹が異なる趣味や生活リズムを持っている場合、個別の空間を持つことが重要です。

また年齢が異なる兄弟姉妹の場合、適切な遊びや学習スペースの提供が求められます。間仕切りを導入することで、それぞれの年齢に合わせた環境を整えることができます。時折、自分だけのプライベートな空間が欲しいと感じることもあります。間仕切りを使って、自分のスペースや秘密基地を作ることができ、子供の創造性や独立心を促進します。

兄弟姉妹が学習する際には、静かで集中できる環境が必要です。間仕切りを使って、それぞれの子供に適した学習スペースを確保することができます。共有の空間で生活する場合、兄弟姉妹間でのトラブルや衝突が発生する可能性があります。間仕切りを使って、各自が自分の領域を持つことでトラブルの軽減が期待できます。

クローゼットの中にワークスペースを作る

居室を間仕切るのではなくクローゼットの一部を仕事や趣味のスペースに利用したい場合。

クローゼットをワークスペースに変えることは新たな個室を1つ作る事と同じで、面積を変えずにスペースを有効に利用できます。クローゼットの中にデスクや本棚を配置することで、他の部屋を広々と使うことができます。その一方でクローゼットにこれまで収まっていた衣類をどうするか、というのは別の問題になりますが。

クローゼットは通常、扉で閉じることができ、外部の視線や騒音から守られる特性があります。これにより、プライバシーを確保し、集中力を高めることができます。また必要な文房具や書類を手軽に収納できます。整理整頓がしやすいため、作業効率が向上します。

扉を閉めることで、仕事が終わった際や一時的に片付けたいときに、スペースを隠すことができます。これにより、リラックスした雰囲気を維持できます。

間仕切りの方法

簡易的な間仕切り

簡易的な間仕切りを使うことで、部屋を仕切ることができ、個々のプライバシーを守ることができます。例えば、寝室や仕事スペースを一時的に仕切ることが考えられます。また簡易な間仕切りは取り外しや移動が容易なため、部屋のレイアウトを柔軟に変更することができます。季節や用途に合わせて空間の使い方を調整できます。

ゲストが泊まる際や特定のイベント時に、一時的にスペースを仕切ることができます。簡易なパーティションやスクリーンを使って、必要な場面で空間を区切りやすくします。

デザイン性の優れた間仕切りを導入することで、単に室内空間を仕切るだけでなく視覚的に別の効果が生まれる事もあります。たとえば、デザイン性の高いスクリーンやパーティションを使った場合、その室内は一転してこれまでとは異なる見え方になることもあります。

壁一面の本棚による間仕切り

壁一面に背板のない本棚を取り付けて間仕切りとして活用する場合、プライバシーの確保という観点からは少し外れます。しかしながら、異なる視点からアプローチすると、そのスペースを穏やかに仕切るという見方もできます。具体的には、目線より低い位置のセルに引き出しを配置し、上部を本棚として使うことが考えられます。

壁一面の本棚を一面に配置することの圧倒的な利点は、通常の仕切り壁を施工する場合、その厚みは約150mmになります。これに加え、両側から本棚を配置することで得られる奥行きの総計は約600mmです。このため、総合的なスペース要件は約700mmになり、その分のスペースを節約できます。節約されたスペースは厚さにして約300-400mm、壁面の長さを2間分とするとおおよそ畳にして1畳弱分の面積に相当し、住空間を効果的に活用する観点から見れば、スペースを無駄なく活かす手段と言えます。

【File776】 ハンモックのある書斎に - Shelf 壁一面の本棚 奥行250mm- マルゲリータお客様事例

一点考慮しなくてはならないのはその間仕切り本棚を天井に固定しなければなりません。壁一面の本棚は基本的には壁面に対して固定するので、それが無い場合は天井に頼る必要があります。即ち天井に本棚上部を固定すべく下地があることが必須です。下地が無い場合はベニヤ等の板材を予め用意してそれを天井の下地に対して固定し、その板材に本棚の上端を固定する必要があります。しかしそれによって得られる効果は「面積」です。

そこに間仕切りを設置することを予め見込んである場合

家を建てる際、特に若い夫婦が計画段階で考慮するべき点は、将来的な選択肢の幅です。

将来、子供が生まれた場合や複数の子供を授かる可能性に備えて、やや広めの部屋を用意し、将来的にそのスペースを分割して2つの子供部屋に変更できるようにするという考え方が一般的です。これは、子供ができなかった場合でも広いスペースを有効に利用でき、将来の変化に柔軟に対応できるという多岐にわたる選択肢を提供するものです。

将来的なスペース分割の選択を実現するため、その部屋には本棚を固定するための下地が事前に天井に埋め込まれているか、露出しているという点が、実際にリフォームを進める上で非常に効率的です。もう一つの利点は、2つの部屋ができた場合、それぞれが建築基準法に合致していることが予め計画されているという点です。

工事を伴わない設置

リビングの一角を間仕切り仕事場と勉強部屋に | カウンター付き本棚 / Shelf (No.41)  | マルゲリータ使用例 シンプル おしゃれ 部屋 インテリア レイアウト

工事費

一般的に小規模の工事であるほど単価は高くつきます。その理由は極めて単純で、この間仕切りを建てる程度の建築工事から見たら小規模の工事であっても職種は一般の工事とほぼ同数のさまざまな業種が必要になってきます。天井や壁の一部を解体するための業種、本体間仕切りを施工するための大工、石膏ボードの施工、内装の壁、天井の補修、クロス貼り、場合によっては電気工事等、それぞれが動く仕事は例え半日で終わったとしても1日分の日当は必要です。しかも小規模であればあるほど圧縮出来る部分がないため大体はそのままかかってしまいます。更にそこに工事全体の段取り、搬入経路の養生、廃材処分等も必要です。工事を伴うとはこういう事です。きちんとした工事を望めば望むほどその費用は当然嵩みます。

壁一面の本棚を設置するだけ、というのは工事というまでは至りません。あるとしてもせいぜい天井に下地を取り付ける程度です。その意味でも本棚を使った間仕切りはミニマライズされた方法の一つと言えます。

将来的な模様替え

壁一面の本棚を設置した後にまた何年かして移転、或いは模様替えが必要となった場合も当然ながらそこに建築工事は伴いません。本棚自体寸法が合えば違う場所に移動設置することも可能です。仮に寸法が合わなかったとしても縦方向であればその部位をカット、或いはフィラー板を宛てがう事により再び新たな場所で壁一面の本棚としてお使いいただくことが出来ます。

間仕切りで利用する(住宅編)実例

カウンター付本棚による間仕切り

File618 カウンター付き本棚を使ったリビングルームの間仕切り

これまでにお使いいただいていた長方形のリビングルームは、これからは異なる使い方がされることになります。工事を行うわけではなく、カウンターが取り付けられた本棚が中央に配置され、その結果として二つの異なるスペースが生まれました。一方にはご主人の書斎があり、反対側にはオーディオルームとシアタールームを兼ねた新しいリビングが形成されました。


File662 間仕切りとしてリビングを仕切る

リビングダイニングエリアは、スケルトンリフォームによって以前の仕切りや天井を撤去し、広々とした一つの大空間となりました。この中に、新たに配置された家族のダイニングエリアは、カウンターが取り付けられた本棚によって仕切られ、家族全員でお使いいただいています。


File346 間仕切りにカウンター付き本棚を使う

この度そこの部屋を工事では仕切らずカウンター付本棚をその中央に置くことにより二つの部屋とし、お子様の勉強部屋とご夫婦の書斎としてお使いいただいています。その間仕切りとして設置された本棚を両面から使うことによりコンパクトで使い勝手も向上されています。


File539 リビングを本棚で間仕切る

リビングダイニングの一部を、カウンター付き本棚で仕切り、その隣に2つのワークスペースを並べて設けられました。ここはご夫妻の作業エリアとお子さんの勉強スペースとして機能しています。これにより、各々の専用スペースはそれぞれの寝室として活用されています。

壁一面本棚による間仕切り

File623 間仕切りで寝室を使用する

リビング内を本棚によって仕切られたエリアは、布団を敷いていることでベッドルームとして利用されています。その上、小上がり床の床下に収納スペースが設けられ、空間が効果的に有効活用されています。


File282 両面から使える間仕切り本棚

リビングの入り口に立ち入ると、天井まで届く高い本棚が配置されており、これが部屋を大きく二つに仕切りながら、同時に壁面収納として機能しています。この構成では、表面と裏面を使い分けることなく、無差別に効果的に利用されています。

考察

工事を伴わない施工

壁一面の本棚を室内に設置する際、内装工事は不要です。通常、内装工事が必要となるのは、特定の部分を取り外す(破壊する)か、戻す(復旧させる)必要がある場合です。しかし、壁一面に本棚を設け、それを天井に固定するだけの操作であるため、内装工事は発生しません。これにより、通常の工事費の1/2から1/3の費用で対応可能であり、コスト削減の効果が大きいです。

この手法は、特にクリエイティブな分野で活動する企業において、オフィス環境を創造的で快適な空間に変える手段として注目されています。

(株)ブックウォール オフィスの本棚 - Shelf 壁一面の本棚 - マルゲリータお客様事例

将来的な模様替え

壁一面に設置された本棚が何年か経った後に移転や模様替えが必要になった場合でも、建築工事は不要です。本棚の寸法が新しい配置に合致する場合は、単純な移動作業で再設置が可能です。また、もし寸法が合わない場合でも、縦方向であればその部分をカットするか、フィラー板を利用して調整することで、新たな場所で再び壁一面の本棚として活用することができます。この柔軟性は、将来の変化に対応できる便利な特徴となっています。

オプションパーツの利用

専用カセット特に引き出し系を使うとその引き出しを間仕切り壁の両面から使えるという利点の他にその引き出しが目隠しになるので間仕切られた相互の部屋からの視界を遮断する効果もあります。目線の高さのセルにだけ引き出し系を使いそれ以外は通常の本棚として交互に使われている例も多くあります。

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